問題社員を配置転換させることは可能?
問題社員を配置転換させることは可能ですが、慎重な対応を行わなければいけません。ここでは、配置転換に関する注意点をお伝えします。労働契約(就業規則)を確認する
配置転換は、労働契約や就業規則に明記された人事権の範囲内でのみ認められています。これらの規定に反する配置転換は、「人事権の逸脱」として無効となる可能性があります。特に、現職とは大きく異なる職種への異動は、契約内容によって制限される場合があるため、注意が必要です。 ・労働契約や就業規則に配置転換の規定があるか ・異動先の業務内容が契約範囲内であるか 特に上記の2点に関してはしっかりと確認しておきましょう。濫用的な配置転換はNG
人事権の範囲内であっても、濫用的な配置転換は無効となる可能性があります。 例えば、業務上の必要性がない場合や、不当な動機や目的がある場合、または従業員に過度な不利益が生じる場合などは「人事権の濫用」と見なされることがあります。 企業にとって、問題社員の配置転換は職場環境を改善する重要な手段ですが、実施に際しては法的な側面を十分に考慮しなければなりません。問題社員の配置転換が無効となる5つのケース
問題社員の配置転換を検討する際、企業が行使する人事権が法的に有効かどうかを慎重に判断する必要があります。以下では、配置転換が無効とされる可能性のある代表的なケースを解説します。ケース①:労働契約・就業規則に配置転換についての定めが全くない
労働契約や就業規則に「配置転換があり得る」といった記載がない場合、会社は従業員の同意を得ずに配置転換を命じることが難しくなります。このような場合、配置転換が無効とされる可能性が高く、従業員とのトラブルに発展する恐れがあります。ただし、正社員で長期雇用を前提とし、職務内容や勤務地が限定されていない場合、例外的に配置転換が認められることもあります。ケース②:従業員との間で職務内容や勤務地を限定する合意をしている
従業員と職務内容や勤務地を限定する特別な合意がある場合、その合意に反する配置転換は違法と判断される可能性があります。特に、有期契約社員の場合、このような合意が結ばれていることが多いです。ただし、従業員自身が配置転換を希望する場合、合意に反することにはなりません。ケース③:専門職の従業員に他の職種への配置転換を命じた
医師や弁護士、公認会計士など、専門職として雇用された従業員の場合、職種の変更は基本的に認められません。専門的なスキルや資格が必要な職種では、配置転換を命じることが人事権の逸脱とみなされる可能性が高いため、慎重に検討する必要があります。ケース④:退職させるために配置転換を命じた
従業員を退職させる目的で配置転換を行うことは、「人事権の濫用」として違法となる可能性があります。特に、配置転換に伴って嫌がらせや退職強要とみなされる行為が行われた場合、企業はパワーハラスメント(パワハラ)の責任を問われる可能性があります。以下のような行為には特に注意が必要です。 ・社内で孤立させる ・異動先での業務を制限する ・異常に過酷な業務を課す などケース⑤:配置転換によって従業員が大きな不利益を負った
配置転換によって従業員が通常甘受すべき範囲を著しく超える不利益を受ける場合、人事権の濫用として無効となる可能性があります。具体的な事例として、以下のようなケースが該当します。 ・家族の介護が必要な状況で遠方への異動を命じたケース(大阪高裁平成18年4月14日判決) ・障害を持つ家族を介護する従業員に遠隔地への配置転換を命じたケース(札幌高裁平成21年3月26日判決) ただし、単身赴任が避けられない場合や保育園の送迎に支障が生じる程度では、配置転換が無効とは判断されないことが一般的です。問題社員の配置転換が有効となる3つの判断基準
不当な配置転換は「権利の濫用」として無効とされる可能性があります。配置転換が有効かどうかは、以下の3つの基準に基づいて判断されます。①業務上の必要性
業務上の必要性が認められない場合、配置転換は無効となります。企業が合理的に運営されるために必要な場合に限り、業務上の必要性が認められるため、例えば以下のような状況が該当します。 ・労働力の適正配置 ・業務の効率化 ・従業員の能力開発や意欲向上 また、定期的な人事異動も業務上の必要性に基づくと判断されるケースが多いです。②動機・目的の正当性
配置転換の動機や目的が不当である場合、その配置転換は無効となる可能性があります。不当な動機や目的として、以下のようなケースが挙げられます。 ・嫌がらせや報復を目的とした配置転換 ・労働組合活動の妨害を目的とした配置転換 ・国籍や信条、性別などによる差別的な配置転換 これらの場合、労働基準法や男女雇用機会均等法に違反し、配置転換の有効性は否定されます。③従業員が受ける不利益の程度
配置転換によって従業員が通常甘受すべき範囲を超える不利益を被る場合、無効とされる可能性があります。なお、単身赴任や子どもの保育園の送迎支障など、通常の不便とみなされるケースでは有効と判断されています。問題社員を配置転換する際の適切な手順
問題社員の配置転換を円滑に進めるためには、事前の準備と適切な手順が欠かせません。このセクションでは、具体的なプロセスをステップごとに解説します。事実確認と問題点の特定
配置転換を行う前に、問題社員の行動やパフォーマンスに関する事実を確認することが必要です。問題点を明確にすることで、配置転換の必要性を判断できます。 このプロセスでは、同僚や上司からのヒアリングや業務記録の確認が役立ちます。口頭および書面による注意・指導
配置転換を検討する前に、問題社員に対して口頭や書面による注意や指導を行うことが求められます。これにより、社員が自ら改善を試みる機会を与えます。 指導が十分でない場合、配置転換が正当でないとみなされる可能性があるため注意が必要です。配置転換の検討と実施
事実確認と指導の結果、改善が見られない場合に配置転換を検討します。この際には、業務上の必要性や社員の適性を慎重に評価することが重要です。 配置転換を実施する際には、社員に対して十分な説明を行い、理解と納得を得る努力が必要です。配置転換後のフォローアップ
配置転換が完了した後も、社員の適応状況を確認するフォローアップが欠かせません。これにより、問題の再発を防ぐことができます。 定期的な面談やフィードバックを通じて、社員が新しい職場での環境に慣れるようサポートします。問題社員の配置転換における注意点
問題社員の配置転換を実施する際には、いくつかの重要な注意点があります。このセクションでは、法的トラブルを避けるための具体的なポイントを解説します。配転命令の権利濫用の回避
配置転換を行う際には、配転命令が権利濫用とみなされないよう注意が必要です。権利濫用とは、正当な理由なく社員に過度な不利益を与える命令を指します。 これを回避するためには、業務上の必要性を明確にし、配置転換が合理的なものであることを示す必要があります。労働者の生活状況への配慮
社員の生活状況にも配慮することが大切です。例えば、異動に伴う通勤時間の増加や、家庭環境への影響を慎重に検討します。 配置転換が社員の生活に大きな負担をかける場合、その影響を軽減するためのサポートを提供することが望ましいです。配置転換の目的と透明性の確保
配置転換の目的を社員に明確に伝えることが重要です。目的が曖昧な場合、社員の不信感を招き、モチベーションの低下につながる可能性があります。 透明性を確保するためには、配置転換の背景や理由を十分に説明し、社員が納得する形で実施することが必要です。労働組合との協議と合意
労働組合が存在する場合には、配置転換に関して協議を行い、合意を得ることが重要です。労働組合との対話を怠ると、後に法的な紛争に発展する可能性があります。 事前に労働組合と十分なコミュニケーションを図ることで、トラブルを回避し、スムーズな配置転換が実現できます。違法な配置転換は会社へのリスクが大きい
配置転換が無効となる可能性がある
企業が配置転換を行う際には、その判断が適法であることが前提です。しかし、企業の人事権が逸脱または濫用された場合、その配置転換は無効となる可能性があります。 配置転換が無効と判断された場合、企業側は再調整を余儀なくされ、部署間での人員バランスを見直す必要があります。これにより、企業は人員の再配置や業務の調整に多大な負担を強いられるため、配置転換に対して慎重な姿勢が求められます。損害賠償を請求される可能性がある
配置転換が不当であった場合、企業は損害賠償を請求されるリスクを負うことになります。特に、パワハラや差別的な配置転換が行われた場合、その責任は企業に直接及びます。 これにより、企業は金銭的な負担を負うだけでなく、従業員の信頼を失う可能性があります。さらに、パワハラが発生した場合、その事実が広まり、従業員間で不信感や士気の低下、場合によっては離職率の増加を招くことがあります。 企業にとって、こうした事態が長期的な業績に悪影響を与える可能性があるため、トラブルを未然に防ぐための対策が重要です。問題社員が配置転換を拒否した場合はどうしたらいい?
問題社員が配置転換を拒否する場合、企業は慎重に対応しなければなりません。配置転換が適法である場合でも、従業員との間でトラブルが生じる可能性があるためです。以下では、問題社員が配置転換を拒否した場合の具体的な対応方法を紹介します。配置転換を拒否する理由を聞く
まず最初に、問題社員が配置転換を拒否する理由をしっかりと聞き取ることが重要です。従業員が配置転換を拒否する背景には、過度な不利益や不安がある場合も考えられます。例えば、勤務地の変更、業務内容の大きな変更、昇進のチャンスの減少など、従業員にとって重大な影響を及ぼす可能性があります。 そのため、まずは社員の立場や懸念を十分に理解し、それに応じた対応を検討することが必要です。もし配置転換によって従業員が過度な不利益を被る場合、転換自体を再考することも一つの選択肢となります。業務上の必要性を説明して理解を求める
従業員が配置転換を拒否する理由を確認した後は、配置転換が適法であり、業務上必要であることを丁寧に説明することが大切です。転換に応じることで企業の業績やチームの効率を向上させることができるという視点を伝えることが重要です。 さらに、配置転換後の職務内容や勤務条件についても詳細に説明し、従業員が不安を抱かないように配慮することが求められます。従業員の理解を得ることがトラブルを避けるカギとなります。それでも拒否を続ける場合は退職勧奨・懲戒処分・解雇等を検討する
十分な説明や説得にも関わらず、配置転換に応じない場合、次の段階として退職勧奨や懲戒処分、最終的には解雇などを検討することになります。ただし、これらの対応にはリスクが伴うため注意が必要です。退職勧奨や懲戒処分を行うことで、従業員との関係が悪化し、企業の信頼性や社内の士気にも悪影響を及ぼす可能性があります。 これらの対応を取る前に、労務問題に詳しい弁護士に相談し、法的なリスクを最小限に抑えるようにすることをお勧めします。法律に則った対応を取ることで、後々のトラブルを防ぎ、企業の負担を軽減することができます。問題社員によるトラブルを未然に防ぐには
問題社員によるトラブルを未然に防ぐためには、採用段階から適切な対策を講じることが重要です。従業員の能力や性格が組織に適合しない場合、早期にトラブルが発生する可能性があるからです。ここでは、問題社員を防ぐために企業が実施すべき事前対策について解説します。バックグラウンドチェックを行う
問題社員を未然に防ぐためには、採用段階でのバックグラウンドチェックが非常に有効です。バックグラウンドチェックでは、候補者の職歴や学歴、犯罪歴、信用情報などを確認し、応募者が提供した情報が実際の経歴と一致しているかどうかを確かめます。これにより、虚偽の情報や不正な履歴を事前に把握することができます。 バックグラウンドチェックを実施することで、採用後のトラブルを未然に防ぐだけでなく、適切な人材を採用する確率を高めることができます。また、候補者の信頼性を確認することで、長期的な安定した雇用関係を築く助けとなり、企業の採用リスクを軽減することが可能です。リファレンスチェックを行う
リファレンスチェックも、問題社員を防ぐための効果的な方法です。リファレンスチェックとは、候補者の過去の勤務先や上司、同僚に対して、業務実績や人間性、協調性などを確認するプロセスです。このチェックを通じて、履歴書や面接だけでは得られない実際の職場での振る舞いや職務遂行能力を把握することができます。また、候補者の誠実さや信頼性を直接確認することができるため、長期的に安定した人間関係を築く助けとなります。 リファレンスチェックは、採用後のトラブルを未然に防ぐための重要な一歩となります。従業員の適応性や協調性を早期に確認することで、職場でのスムーズな連携が期待でき、トラブルの発生を防ぐ効果的な手段となるでしょう。まとめ【問題社員の配置転換は慎重に】
問題社員の配置転換は、企業にとって重要な手段である一方、慎重に対応しなければ、法的なリスクや従業員とのトラブルを招くこともあります。 配置転換を行う際には、まず労働契約や就業規則を確認し、業務上の必要性や正当な目的に基づいた異動であるかを確かめましょう。また、従業員が過度な不利益を受けないよう配慮することも大切です。異動後のフォローも必ず行いましょう。バックグラウンドチェック・リファレンスチェックは弊社にお任せください
今回の記事をお読みいただき、問題社員の配置転換に関する対策やその後の対応についてご理解いただけたかと思います。企業が採用面接を行う際、最適な人材を選びたいという思いは共通していますが、同時にさまざまなリスクも伴います。適切な人材を見極め、問題を未然に防ぐためには、採用前にしっかりとした調査を行うことが不可欠です。 私たち企業調査センターでは、長年の実績に基づく確かなノウハウと、独自の情報収集ルートを駆使して、採用予定者のバックグラウンドチェックや社内調査、取引先の信用調査、裏アカウント特定など、さまざまな調査を行っています。 もし、採用予定者や取引先、社内で気になる点がある場合は、お気軽にご依頼ください。私たちの調査サービスを通じて、リスクを最小限に抑え、より安心できる採用活動をサポートいたします。まずは、下記のリンクからお問い合わせください。 お問い合わせはこちらから候補者との社風や同僚との相性を診断するサービス
『知っトク』
採用時に社風や同僚と相性を見誤ると早期に辞めてしまう・・・。
採用者と会社のミスマッチを少なくできれば、早期離職を防げると思いませんか?
Jobポテンシャル診断「知っトク」は、20問の心理テストで31パターンの性格タイプを診断。
性格タイプ別の質問で、社風や同僚との相性を「知る」ためのサービスです。
