焦りの中で決めた採用
- 地方拠点を持つ中堅メーカーC社。
- 相次ぐベテラン退職で営業部門は空洞化し、社長は人事に命じました。
- 「早く即戦力を採れ。数字が止まるぞ」
- 候補者E氏は大手IT出身。履歴書には「年間売上2億円」「新規開拓トップ賞」の経歴。「御社の営業を必ず立て直します」面接でも力強く言い切る姿が印象的でした。わずか2週間で内定。人事は裏付けを取りたかったが、現場の「待ったなし」の声に押され、検証は省略されました。
入社直後から走る違和感
- 配属1週間。営業会議は最初から重い空気でした。
- E氏は初めての商談に臨んだが、顧客の質問に答えられず言葉が詰まる。沈黙のあと、顧客は椅子を引き「今日はここまでにしましょう」と席を立ったそう。
- 提出した提案書をめくった瞬間、同席していた若手社員は顔を曇らせました。競合比較もなく、価格条件は顧客ニーズから外れており、打ち合わせが終わった途端、会議室にざわめきが走りました。
- 「…このレベルで本当に大手を担当していたのか?」「経歴が虚飾じゃないのか?」
- その小声は瞬く間にチーム全体に広がり、現場に不信の種が芽生えました。期待して採った即戦力は、最初の一週間で「疑念の対象」に変わったのでした。
退職の衝撃
- 入社して1か月。E氏は表面上は動き回っていました。
- しかし商談はことごとく空振りし、顧客の反応は冷ややか。社内では「結果が出ないのはまだ慣れていないから」と言い聞かせる空気がありましたが、2か月目。状況は悪化しました。提案資料は完成度が低く、顧客からは「準備不足」と突き返される。営業部長は苛立ちを隠せず、「何をしてきたんだ」と叱責する場面が増えました。部下や同僚もフォローに追われ、本来の自分の案件が進まなくなっていきました。
- そして3か月目の朝。人事担当の机に、無造作に置かれた白い封筒。E氏の署名入りの退職届。「御社のやり方は自分に合わない。条件も思っていたほどではなかった」短い言葉を残し、E氏は背を向けて去っていきました。その日の午後、営業部の緊急会議。営業部長は机を叩き、声を荒げ「ふざけるな! この3か月、どれだけの時間と金をかけたと思っているんだ。今期の数字はどうする!」会議室に沈黙が落ちました。
- 誰も言葉を返せず、ただ椅子に沈み込み、人事担当は資料を握りしめたまま顔を上げられませんでした。
数字で見える損害
- E氏が去ったあとに残ったのは、ただの欠員ではありませんでした。まず採用活動に投じた費用と教育にかかった工数。金額にしておよそ500万円。
- しかしそれは序章にすぎません。E氏が担当するはずだった新規案件4件はすべて失注。推定売上は約2億円。その数字は会議室のスクリーンに表示された瞬間、場の空気を一気に重くしました。「この数字がゼロだというのか…」とつぶやく声。
- さらに追い打ちとなったのは、人材の連鎖離脱でした。フォローに疲弊した営業メンバー2名が退職を選び、残されたチームの士気は急落。本来なら攻めに出るべき時期に、組織は防戦一方に追い込まれました。合算すれば数億円規模の損失。
- しかし金額以上に深刻だったのは「また人事が外した」というレッテルが全社に広がり、人事部への信頼が地に落ちたことでした。 採用の失敗が数字を越え、会社全体の空気を変えてしまいました。
見抜けたはずのサイン
- もし採用前にリファレンスを取っていれば、警告ははっきりと聞こえていました。「大口契約はチーム全体の成果で、彼がリードしたことは一度もない」前職の上司はこう答え、
- 「彼は数字を自分の手柄のように話すが、実際は横取りに近い。任せれば必ず不満が出る」同僚はため息をつきながら語ったかもしれません。
- さらに人事記録を見れば、2年以内の短期離職を繰り返していたことも分かったはずです。安定して組織に根を張れない人物を、即戦力として迎え入れるなど本来あり得ません。
- つまり、裏付けさえ取っていればこの採用は最初の面接段階で止められたのです。それを怠った結果、半年の停滞と数億円規模の損失が現実となり、 後に残ったのは「なぜ確認をしなかったのか」という痛烈な後悔だけでした。
損失を未然に防ぐ唯一の方法
- 中途採用の一人の判断が、会社全体を狂わせる。焦りから裏付けを省けば、半年の時間が消え、数億円の売上を逃し、社員と投資家の信頼までも失います。この連鎖は一度始まれば止まりません。撤退、ブランド失墜、人材流出。企業に残るのは「なぜ確認をしなかったのか」という後悔だけです。
- 防げる道は一つ。
- 候補者の経歴と実績を事実で裏付け、虚偽や誇張を見抜くこと。
- バックグラウンドチェックとリファレンスチェックを必須に組み込むこと。
- 次の採用で、あなたはまた数億円を失うリスクを抱えますか。 それとも損失を回避し、成長を守る側に立ちますか。 決断を先送りにできる時間は、もう残されていないのです。
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