能力不足の社員を自主退職させる方法を考える前に知っておくべき基本
社員の能力に疑問を感じたからといって、いきなり退職を促すのは非常に危険です。
まずは「能力不足」の判断基準や、会社として取るべき適正な手順について理解することが重要です。
「能力不足」と判断する基準を明確にする
そもそも「能力不足」とは何を指すのかを社内で明確に定める必要があります。 例えば、業務の習熟度が平均以下、指示通りに行動できない、報告・連絡・相談ができないなど、具体的な項目を洗い出しましょう。 主観的な印象だけで「能力が低い」と決めつけてしまうと、後々トラブルにつながる可能性があります。 客観的なデータや実績に基づいた評価基準の整備が求められます。人事評価制度を整備しておく
社員の能力を正確に把握するためには、しっかりとした人事評価制度が必要です。 定期的な評価やフィードバックを行い、社員本人にも改善のチャンスを与える仕組みを整えましょう。 このような制度があることで、後に退職の話を持ち出したときに「正当なプロセスを踏んでいる」と説明できます。 また、社内の透明性を高めることにもつながります。配置転換や教育研修などの改善努力を行う
能力不足と感じた場合でも、すぐに退職を促すのではなく、まずは改善のための機会を与えることが大切です。 他部署への配置転換や業務内容の見直し、スキルアップ研修の提供など、複数の選択肢を用意しましょう。 本人の適性に合ったポジションで力を発揮できる場合もあります。 このような改善努力は、退職を促す際の説明責任を果たすうえでも重要です。本人の特性や適性を見極める
「能力が足りない」と思っていたとしても、実は配置ミスや業務内容が合っていないだけの場合もあります。 社員との面談や日常の観察を通じて、性格や志向性を把握しましょう。 たとえば、マルチタスクが苦手でも、1つの業務を丁寧にこなすタイプかもしれません。 一人ひとりの特性を正しく理解することが、能力開発や最適配置につながります。能力不足の社員を自主退職させる方法としてよくある誤った対応
能力不足の社員に対して不適切な対応をすると、企業側が法的に不利な立場になることもあります。 以下に紹介するような行為は絶対に避けなければなりません。圧力をかけて退職を強要する
「このままだとクビになる」「周りに迷惑がかかっている」など、精神的な圧力をかけて退職を迫る行為は違法です。 退職の意思は本人の自由意志であるべきで、強制的に辞めさせることはパワハラや不当解雇とみなされる恐れがあります。 このような対応は企業の信用を大きく損なう原因となります。 円満退職を目指すならば、冷静かつ段階的なアプローチが必要です。業務を与えない・孤立させる
意図的に仕事を割り当てない、会議に呼ばない、周囲と接触させないなどの行為も違法とされる可能性があります。 これは「職場内いじめ」と捉えられ、社員のメンタルヘルスにも悪影響を与えます。 また、訴訟リスクや労基署からの指導の対象にもなります。 仕事を通じた改善の機会を与えることが企業としての正しい姿勢です。記録を取らずに注意だけで済ませる
注意や指導を口頭だけで済ませ、記録を残していないと、後にトラブルになった際に会社側の主張が通りにくくなります。 能力不足を理由に退職を促す場合、すべての対応を文書で残しておくことが重要です。 メール、報告書、評価シートなどで記録を蓄積しておきましょう。 そうすることで、客観的な証拠として役立ちます。就業規則に基づかない指導を行う
会社としての指導や評価は、必ず就業規則や社内マニュアルに基づいて行う必要があります。 基準が不明確な指導では、社員側から「不公平だ」と感じられてしまいます。 明確な基準とルールに則った対応こそが、信頼される組織運営につながります。 就業規則は定期的に見直し、現状と合っているか確認しましょう。トラブル回避のポイントを押さえた能力不足の社員への正しい対処法
能力不足の社員に対して正しく、かつ法的リスクを回避するための対応方法を紹介します。
これらの方法を取り入れることで、企業側のリスクを最小限に抑えつつ、社員本人の納得感も得られる可能性が高まります。
定期的な面談を実施する
定期的な1on1面談を行うことで、社員の悩みや課題を早期に把握できます。 継続的なコミュニケーションは信頼関係の構築にもつながり、自主退職を促す際にも効果的です。 「改善の意欲があるのか」「モチベーションに問題はないか」などを聞き出す機会にもなります。 面談の内容は必ず記録に残しておきましょう。改善計画(パフォーマンス・インプルーブメント・プログラム)を提示する
PIP(パフォーマンス・インプルーブメント・プログラム)は、一定期間内に達成すべき目標や改善点を明確にした文書です。 このプランを通じて、能力の向上に向けた具体的なアクションを提示できます。 改善の機会を与えた証拠としても機能するため、退職を巡るトラブル回避にも有効です。 プランの内容は現実的かつ具体的に設定しましょう。業務の指示・評価を文書で残す
口頭での注意や指示だけでなく、文書として残すことが重要です。 メールや報告書、評価シートなどを活用して、業務上のやり取りを記録化しましょう。 「何を伝え、どう改善を促したのか」を明確にすることで、万が一の際の防衛材料になります。 また、社員側にも自覚を促す効果があります。第三者(人事・上司)を交えて対応する
直属の上司だけで対応せず、人事担当や他の上位者を交えて進めることが重要です。 組織的に対応することで、公平性や客観性を確保できます。 特に面談や改善計画の説明の場では、複数人で同席するようにしましょう。 これにより「個人の感情で動いていない」ことを明確にできます。能力不足の社員を自主退職させる方法で重要な話し合いの進め方
社員に自主退職を促す際の話し合いでは、言葉の選び方や進め方によって印象が大きく変わります。 冷静かつ丁寧なコミュニケーションが、円満な話し合いには欠かせません。感情的にならず冷静に話す
社員との面談で感情的な言葉をぶつけてしまうと、関係が悪化し、対話が成立しなくなる可能性があります。 たとえ相手に非があったとしても、指摘は冷静に、事実ベースで伝えるようにしましょう。 「あなたはダメだ」ではなく、「こういう点で改善が見られない」という言い方が効果的です。 攻撃的な言葉を避け、相手の立場にも配慮した表現を心がけてください。社員の話を最後まで聞く
一方的に話を進めるのではなく、社員の言い分にも耳を傾けることが重要です。 本人が自分の思いや状況を話すことで、気持ちが整理され、自主的な判断につながりやすくなります。 面談では、まず社員に話してもらい、その内容を受け止めてからこちらの意見を伝えるという順番が望ましいです。 途中でさえぎったり否定することは避けましょう。選択肢を提示して自主的な判断を促す
「辞めるしかない」といった言い方ではなく、複数の選択肢を提示することで、本人に判断の余地を与えることができます。 たとえば、「改善計画に取り組むか、それとも転職を考えるか」といった提案をするのも一つの方法です。 このような選択肢があることで、社員は「自分で決めた」と納得しやすくなります。 強制ではなく、あくまで自発的な決断を促すスタンスが大切です。退職後のサポート(転職支援など)も説明する
退職を選択した場合のサポート内容についても丁寧に説明することで、社員の不安を和らげることができます。 転職エージェントの紹介、履歴書の添削、職務経歴書の作成支援などを用意しておくと効果的です。 「辞めたら終わり」ではなく、「辞めた後も支援する」という姿勢が、円満退職へのカギになります。 このような配慮が、企業の信頼にもつながります。能力不足の社員を自主退職させる方法で注意すべき法律とリスク
能力不足を理由に退職を促す行為には、法的なリスクが常につきまといます。
トラブルを防ぐためには、最低限の法律知識を持っておくことが重要です。
不当解雇とみなされるリスクがある
たとえ能力に問題があっても、突然の解雇は不当とされる可能性があります。 「改善の機会を与えたか」「就業規則に基づいて対応したか」がポイントです。 十分な改善措置を取らずに解雇や退職を促すと、労働審判や訴訟に発展する恐れがあります。 対応は必ず段階を踏んで行いましょう。退職強要はパワハラに該当する
退職を強く迫るような言動は、パワハラ(パワーハラスメント)にあたります。 職場での精神的圧力や嫌がらせがあったと認定されれば、企業側が責任を問われることになります。 「退職しないと困る」といった発言も、パワハラと受け取られる可能性があるため注意が必要です。 言動の一つひとつに慎重さが求められます。労働契約法や労基法を理解しておく必要がある
労働契約法では、解雇や退職に関するルールが明確に定められています。 たとえば、正当な理由なしに解雇することは違法とされ、社員に多額の損害賠償が認められる場合もあります。 労働基準法でも解雇予告や就業条件の明示について規定されており、法的な知識は不可欠です。 人事担当者や上司は、最低限の法知識を身につけておきましょう。ハラスメントで訴えられる可能性がある
社員に対する一連の対応がハラスメントだと認定された場合、企業や上司が損害賠償請求の対象となるケースもあります。 特に精神的なダメージが大きい場合、労災として認定されることもあります。 「辞めさせたい」と思っていても、感情的に接することは絶対に避けましょう。 記録を残し、第三者を交えて対応することが防衛策となります。能力不足の社員を自主退職させる方法を専門家に相談すべきケース
対応が複雑化したり、トラブルが起きそうな場合には、迷わず専門家に相談しましょう。 法的な知識や経験を持った第三者に助けを求めることで、リスクを最小限に抑えることができます。社員が退職に強く反発している場合
本人が強く退職を拒否している場合、下手に対応すると「退職強要」と受け取られてしまう可能性があります。 このような状況では、弁護士や社会保険労務士に相談しながら慎重に進めましょう。 一人で判断せず、専門家の意見を参考にすることで、より安全な対応が可能になります。 社員との話し合いも、専門家の立ち会いのもとで行うと安心です。過去の対応が記録に残っていない場合
注意や指導をした証拠が残っていない場合、企業側の主張が認められないことがあります。 このようなケースでは、記録の整理や対応方針の立て直しが必要です。 弁護士や社労士に相談し、これまでの対応に問題がなかったか確認してもらうと良いでしょう。 記録の有無は裁判や労働審判で非常に重要なポイントになります。トラブル化してSNSなどで拡散された場合
近年では、社員が不満をSNSで発信するケースも少なくありません。 企業イメージの悪化や顧客離れにもつながるリスクがあります。 広報対応やリスクマネジメントも含め、弁護士への相談が推奨されます。 社内での初動対応が遅れると、火消しが困難になるため、迅速な対応がカギです。法的リスクを判断できない場合
そもそも自社の対応が合法なのかどうか分からない場合、独断で動くのは危険です。 法的な判断を誤ると、企業が損害賠償を負うリスクがあります。 弁護士や社労士に対応策を事前に確認し、問題がないかチェックしてもらいましょう。 「専門家に確認する」習慣をつけることが、安全経営の第一歩です。まとめ|能力不足の社員を自主退職させる方法とトラブル回避のポイントとは
能力不足の社員に対しては、いきなり辞めさせようとするのではなく、段階的な対応が必要です。
以下のポイントを押さえることで、企業として適正かつ円満な対応が可能になります。
まずは改善の努力を尽くすことが大切
改善のチャンスを与えずに退職を促すのは不適切です。 配置転換や教育指導を通じて、社員の可能性を最大限引き出しましょう。 企業としても誠意ある対応が求められます。 その努力が後のトラブル防止につながります。退職までの過程を記録に残す
注意・指導・面談・評価などの記録は、トラブル回避において極めて重要です。 客観的な証拠として、企業側の正当性を裏付ける材料になります。 紙・デジタルの両方でしっかりと保管しておきましょう。 記録を習慣化することで、リスクに備えられます。法律に基づいた対応を行う
労働法や就業規則に反した対応は、後々大きな問題になります。 必ず法的な視点で対応をチェックし、適正な手順を守りましょう。 知らなかったでは済まされない時代です。 人事部門は特に、法令知識のアップデートを怠らないことが重要です。専門家に相談することでリスクを最小限にできる
対応が難しい場合は、迷わず専門家に相談することが最も確実な方法です。 弁護士や社労士の意見を取り入れながら、慎重に進めることで企業のリスクを最小限に抑えられます。 自社だけで判断せず、外部の知見を活用する姿勢が大切です。 その積み重ねが、安定した組織運営につながります。採用の失敗を無くすなら、企業調査センターにお任せください
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