BeRealの仕組みと「構造的に漏洩しやすい」理由
BeRealのリスクを理解するには、まずその仕組みを正確に知る必要があります。BeRealでは、運営側からランダムな時刻に「今すぐ撮影」という通知が全ユーザーに届き、ユーザーは原則として2分以内に撮影・投稿することが求められます。撮影はスマートフォンの前面カメラと背面カメラの両方で同時に行われ、自分の顔と、その瞬間に目の前にある風景がセットで記録されます。時間外に投稿すると「遅れて投稿した」ことが友達に表示されるため、通知が来たらその場ですぐ撮るという行動が習慣化しやすい設計です。さらに、投稿には位置情報を付加でき、設定によっては撮影場所が共有されます。通常のSNSには投稿前に内容を吟味する時間がありますが、BeRealはその熟考のプロセスを設計上排除しています。勤務時間中に通知が届けば、撮影場所は必然的にオフィスや取引先になります。背面カメラは本人が意識していない背景まで克明に写し、2分という制限時間は写り込みの確認を許しません。つまりBeRealの漏洩リスクは、社員のモラルの問題である以前に、アプリの設計と職場環境の組み合わせが生む構造的な問題なのです。
「2分以内・前後カメラ同時撮影」が確認の余地を奪う
通知から2分という時間制限は、投稿前に背景を点検するという基本的なセキュリティ行動を事実上不可能にします。しかも前後カメラの同時撮影により、自分が見ている方向と反対側、つまり本人の視界に入っていない背後の様子まで記録されます。撮影者自身が「何が写ったか」を完全には把握しないまま投稿される点が、従来のSNSとの決定的な違いです。位置情報と日常の蓄積による特定リスク
BeRealの投稿に位置情報が付くと、撮影場所がそのまま共有されます。毎日の投稿が積み重なることで、勤務先の所在地、出社・退社の時間帯、立ち寄り先といった行動パターンが浮かび上がり、非公開のオフィス拠点や社員個人の生活圏まで特定され得ます。これは企業情報の漏洩であると同時に、社員自身の安全に関わる問題でもあります。「親しい友達だけ」という安心感の落とし穴
BeRealは基本的に承認した友達同士で投稿を共有する設計のため、利用者は「身内にしか見えない」という安心感を持ちがちです。しかし、閲覧者によるスクリーンショットと外部SNSへの転載は技術的に防げず、友達の友達へと情報が広がる経路は常に存在します。クローズドなアプリだから安全という認識こそが、警戒心を緩める最大の要因になっています。企業で起こりうる情報漏洩のパターン
BeRealによる企業の情報漏洩で最も典型的なのは、オフィス内での撮影による写り込みです。背面カメラがとらえたデスク周りには、PCの画面に表示された顧客リストや設計資料、机上の契約書類、壁のホワイトボードに書かれた案件名や顧客名、貼り出された組織図やスケジュールなど、機密情報の塊といえるものが並んでいます。首から下げた社員証や入館証が前面カメラに写れば、氏名・顔写真・所属が一度に流出し、なりすましや不正入館に悪用されるおそれもあります。実際に、職場で撮影された投稿が外部のSNSに転載・拡散して企業が対応に追われる事案も報じられており、報道された事例は氷山の一角と考えるべきです。さらに見落とされがちなのが、同僚の写り込みです。本人は了解していても、背景に写った他の社員は撮影されたことすら知らず、肖像権やプライバシーの問題に発展し得ます。取引先に常駐・訪問している社員が先方のオフィスで撮影すれば、自社だけでなく取引先の機密まで漏らすことになり、契約違反や信頼関係の毀損という深刻な事態を招きます。画面・書類・ホワイトボードの写り込み
オフィスの背景に写る情報のうち、特に危険なのはPC画面とホワイトボードです。画面には顧客データや社外秘資料が表示されていることが多く、ホワイトボードには案件名や顧客名が日常的に書かれています。拡散された画像は第三者に拡大・解析され、肉眼では読めない文字まで読み取られる前提で考える必要があります。社員証・入館証の流出
社員証が写った画像からは、氏名、顔写真、社員番号、所属企業が特定できます。これらはなりすましの材料となるほか、カードのデザインが知られること自体が物理セキュリティの低下につながります。社員証は撮影の場では必ず外す、デスクに置いたままにしないといった基本動作の徹底が求められます。取引先・第三者を巻き込む漏洩
客先常駐や訪問先での撮影は、自社の管理が及ばない場所で他社の機密を流出させる行為であり、損害賠償や取引停止に直結しかねません。また、背景に写り込んだ同僚や来訪者のプライバシー侵害も問題になります。自社の情報だけ守ればよいという発想では足りない点が、BeReal対策の難しさです。若手社員に多い利用実態と教育上の課題
BeRealは、10代から20代の若年層を中心に広く利用されているSNSであり、新入社員や若手社員の多くにとっては入社前から続く日常的な習慣です。「盛らない・加工しない」文化のもとでは「その瞬間にいる場所」をそのまま写すことが当たり前になり、職場も例外なく被写体になります。若手社員にとって、通知が来たら撮るという行動は深く習慣化しており、勤務中であっても反射的にスマートフォンを取り出してしまうことは十分に起こり得ます。また、承認した友達だけに共有されるクローズドな設計が「これはプライベートな日記のようなもの」という認識を生み、会社のSNSガイドラインの対象だと考えていないケースも少なくありません。企業側の課題は、管理職世代がこのアプリの存在や仕組みをそもそも知らないことです。X(旧Twitter)やInstagramを想定した既存のガイドラインや研修は、「投稿前によく確認する」ことを前提としており、確認する時間自体が存在しないBeRealのリスクをカバーできていません。教育を実効性のあるものにするには、企業側がまず若手の利用実態を正しく把握し、BeRealを名指しした具体的なリスク説明を行うことが欠かせません。習慣化された「即時撮影」という行動
通知から2分以内という仕組みは、ユーザーに「考えてから撮る」のではなく「撮ってから考える」行動を習慣づけます。長年の利用で身についたこの反射的な行動は、入社時の一般的な注意喚起だけで変わるものではありません。勤務中は通知が来ても撮影しない、撮るなら指定の場所でという代替行動まで具体的に示す教育が必要です。ガイドラインの「想定外」になりやすい
多くの企業のSNSガイドラインは、不特定多数に公開される投稿を念頭に作られています。友達限定共有のBeRealは社員の感覚では「SNSに投稿している」意識すら薄く、ルールの対象外だと解釈されがちです。ガイドラインの定義を「外部に送信されるあらゆる写真・動画・情報」に広げ、具体的なアプリ名を例示して認識のずれをなくすことが重要です。企業が取るべき具体的な対策
BeRealのリスクに対して企業が取るべき対策は、ルール、教育、環境整備の三層で設計することが効果的です。第一にルールの策定です。就業規則やSNSガイドラインに、執務エリア・顧客情報を扱うエリアでの私物スマートフォンによる撮影を原則禁止とする規定を明記し、BeRealのような即時投稿型アプリも対象であることをアプリ名を挙げて例示します。撮影が必要な場合の許可手続きや、撮影してよい場所(休憩スペースなど機密情報のない区画)を定めることで、全面禁止による反発を抑えつつ実効性を確保できます。第二に教育です。入社時研修と定期研修にBeRealを含む最新アプリのリスクを組み込み、写り込み事例を使った演習で「自分の日常の行動に潜むリスク」として体感させます。第三に環境面の整備です。機密情報を扱う区画への私物スマートフォンの持ち込みルール、業務用端末への不要アプリのインストール制限、ホワイトボードの運用見直し(顧客名を書かない、使用後は消す)、PC画面ののぞき見防止フィルターや離席時ロックの徹底、社員証を社外で外す運用など、「写っても漏れない職場」を作る発想が有効です。
ルール策定のポイント
ルールは禁止事項の羅列ではなく、なぜ危険なのかという理由とセットで示すことが定着の条件です。執務エリアでの撮影禁止、位置情報の業務時間中のオフ、社員証や画面の写り込み防止といった具体的な行動レベルまで落とし込み、違反時の対応も明記します。策定後は同意書の取得や定期的な周知で形骸化を防ぎます。研修は「自分ごと化」が成否を分ける
若手社員に響く研修は、抽象的な訓話ではなく、実際の投稿画像を模した教材で「この写真から何が読み取れるか」を考えさせる形式です。漏洩が本人のキャリアに及ぼす影響まで具体的に伝えることで、会社のためではなく自分のための行動として定着します。管理職向けにも、若手の利用実態とアプリの仕組みを学ぶ機会を設けるべきです。私物スマートフォンと職場環境の管理
業務用端末はMDM(モバイルデバイス管理)でアプリの制限が可能ですが、私物端末の利用を技術的に完全統制することは現実的ではありません。だからこそ、機密区画への持ち込みルールや保管場所の設定といった物理的な運用と、写り込んでも被害が出ないよう機密情報の掲示・放置をなくす職場環境の整備を組み合わせることが、実効性の高い対策になります。万一漏洩が起きたときの初動対応
どれだけ予防策を講じても、漏洩の可能性をゼロにすることはできません。重要なのは、発生時に被害を最小化する初動体制をあらかじめ整えておくことです。まず、社員が自分の投稿の問題に気づいた場合や、他の社員の投稿を発見した場合に、ためらわず報告できる窓口と報告ルートを明確にしておきます。報告者を責める文化があると発見が遅れ、被害が拡大するため、早期申告を評価する姿勢を打ち出すことが肝心です。報告を受けたら、投稿の削除を本人に依頼するとともに、すでに外部へ転載されていないかを確認します。転載が確認された場合は、転載先のプラットフォームへの削除申請を進めつつ、スクリーンショットなどで証拠を保全します。並行して写り込んだ情報を精査し、顧客情報や個人データが含まれる場合には、個人情報保護委員会への報告や本人通知など、契約や法令に基づく対応の要否を判断します。影響範囲の特定や流出経路の調査を自社だけで行うことが難しい場合は、デジタルフォレンジックや企業調査の専門機関に依頼することで、事実関係を客観的に把握し、適切な対外説明と再発防止につなげることができます。報告しやすい体制が被害を最小化する
漏洩対応のスピードは、最初の報告がどれだけ早いかで決まります。「言い出したら処分される」という空気は隠蔽を生み、外部からの指摘で発覚するという最悪の展開を招きます。自己申告を不当に不利に扱わない方針を明示し、報告先を全社員が知っている状態を作ることが、危機管理の土台です。証拠保全と専門家の活用
投稿の削除を急ぐあまり、証拠を残さずに消してしまうと、影響範囲の調査や対外説明に支障をきたします。削除の前にスクリーンショットやURLの記録を行い、拡散状況を確認する手順を初動マニュアルに組み込みましょう。調査や対応の判断に迷う場合は、早期に外部の専門機関へ相談することが結果的に損害を小さくします。まとめ
BeRealは、通知から2分以内に前面・背面カメラで同時撮影するという仕組みにより、投稿前に内容を確認する余地がほとんどない、構造的に情報漏洩が起こりやすいSNSです。オフィスでの撮影によるPC画面・書類・ホワイトボード・社員証の写り込みや位置情報の共有は、企業の機密と社員自身の安全の両方を脅かします。若手社員にとっては入社前からの日常的な習慣であるため、頭ごなしの禁止ではなく、撮影ルールの策定、アプリ名を挙げた具体的な研修、私物スマートフォンの持ち込み管理と「写っても漏れない」職場環境の整備、そして万一の際の初動体制までを一体で設計することが、実効性のある対策となります。 企業調査センターでは、情報漏洩に関する調査や採用時のバックグラウンドチェックなど、企業のリスク管理を支援する調査サービスを提供しています。社内の情報管理体制にご不安のある方は、お気軽にご相談ください。採用調査のプロが教える!
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