管理職候補として選考していた人物は、書類、面接ともに高評価でした。
受け答えは落ち着いており、これまでの実績も十分。職歴や在籍期間などを確認したバックグラウンドチェックでも、採用判断に影響するような問題は見つかりませんでした。
企業側は、ほぼ採用する方向で最終調整に入っていました。
しかし、リファレンスチェックで元上司に話を聞くと、面接では見えなかった一面が出てきました。
同僚からは「仕事ができる人」
元同僚の評価は良好でした。
責任感があり、結果にも厳しい。仕事を途中で投げ出すことはなく、周囲との間でも目立った問題はなかったといいます。
面接時の印象とも大きな違いはなく、この時点では採用を見直す理由はありませんでした。
元上司が話した「何度か注意した」
一方、元上司からは、部下や後輩への接し方について気になる話が出ました。
候補者は成果への意識が高い反面、仕事が遅い部下や期待どおりに動かない相手に対し、言葉が強くなる傾向があったといいます。
指導方法について何度か注意したものの、本人には「厳しく言わなければ人は育たない」という考えがあり、大きく変わることはなかったそうです。
元上司は仕事の能力を評価した上で、こう話しました。
「前の会社では周囲が間に入り、何とか対応していました。ただ、今の時代ならハラスメントとして問題になる可能性があります。会社によっては、管理職としての採用は慎重に考えた方がいいと思います」
この話を受け、企業側はいったん採用手続きを止めました。
優秀な社員が、優秀な管理職とは限らない
バックグラウンドチェックで分かるのは、主に候補者が申告した経歴や実績が事実かどうかです。
リファレンスチェックでは、仕事の進め方、周囲との関係、部下への接し方など、書類や面接だけでは見えにくい部分を確認できます。
今回の候補者は、経歴に問題があったわけではありません。個人として成果を出せる人物だったことも事実です。
ただし、管理職には自分の数字だけでなく、部下を育て、チームを維持する役割があります。強い指導によって部下が萎縮したり、離職につながったりすれば、採用した一人だけの問題では済みません。
企業は追加面談を行い、過去に指導方法を注意された認識があるか、現在のハラスメント基準をどう考えているか、自社のマネジメント方針に合わせられるかを改めて確認しました。
管理職採用では、「仕事ができる」という評価だけでは足りません。
どのように人を動かし、部下と向き合ってきたのか。そこまで確認して初めて、採用後のリスクが見えてきます。
Q1. バックグラウンドチェックで問題がなければ、管理職として採用しても大丈夫ですか
A. 必ずしもそうとは限りません。バックグラウンドチェックでは、職歴、学歴、資格、在籍期間など、候補者が申告した経歴の整合性を確認します。一方、部下への接し方や仕事の進め方、周囲との関係は、書類や経歴確認だけでは見えにくいため、管理職採用ではリファレンスチェックの併用が有効です。
Q2. 今回事例では、リファレンスチェックで何が分かりましたか
A. 元同僚からは仕事への責任感や成果について良好な評価が得られましたが、元上司からは、部下や後輩への言葉が強くなりやすく、指導方法について何度か注意したとの話がありました。企業によっては、同じ言動がハラスメント上の問題につながる可能性があると判断されました。
Q3. 元上司の評価だけで不採用にしてよいのでしょうか
A. 元上司一人の意見だけで、直ちに不採用と決めるべきではありません。評価には相性や当時の職場環境も影響します。同僚の評価、候補者本人の説明、面接内容、採用予定の役割、自社の組織風土などを合わせて判断する必要があります。
Q4. ハラスメント傾向が見つかった場合、採用を見送る以外の選択肢はありますか
A. あります。追加面談で本人の認識を確認する、管理職ではなく別の役割を提案する、入社後の研修や評価期間を設定するなどの方法が考えられます。ただし、部下を持つ役割との相性や、企業側が継続的に管理できるかも含めて慎重に判断する必要があります。
Q5. 管理職採用でリファレンスチェックを行うメリットは何ですか
A. 面接だけでは確認しにくいマネジメントスタイル、部下との関係、指導方法、周囲への影響などを把握できる点です。個人として高い成果を出していた人でも、管理職として自社に合うとは限りません。採用後の離職や職場トラブルを防ぐための判断材料になります。
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