「犯罪歴がない=安心」ではない。採用前のSNS調査で見つかった“企業が知っておくべき兆候”とは

「犯罪歴がない=安心」ではない。
採用前のSNS調査で見つかった“企業が知っておくべき兆候”とは

採用候補者の経歴や人物像を確認し、企業の採用リスクを低減する「採用前調査」。
企業調査センターでは、公開情報やSNSなどを確認し、履歴書や面接だけでは見えにくい候補者の情報を調査しています。
特に近年、子どもと接する教育・保育などの現場では、採用時の安全性確認に対する関心が高まっています。

しかし、難しいのは「過去に問題を起こした人」だけを確認すれば十分ではないことです。
犯罪歴など明確な事実には至っていなくても、企業として「採用前に知っていたら判断材料にしたかった」と感じる情報が、SNS上に残されているケースがあります。

では、日々SNSをチェックしている調査員は、実際にどのような情報を発見しているのでしょうか。
企業調査センターの調査員に、これまでの事例について聞きました。

※本記事に登場する事例は、個人が特定されないよう一部情報を抽象化・編集しています。


「犯罪かどうか」ではなく、「企業が採用前に知っておきたいか」

インタビュアー:
今回は少し踏み込んだテーマですが、SNS調査の中で、性的な面を含めて「企業側が採用前に知っておいた方がいい」と感じた事例はありますか?

調査員:
あります。
ただ、最初にお伝えしておきたいのは、私たちはSNS上の情報だけを見て「この人は危険人物だ」「犯罪を起こす」と断定するわけではありません。
あくまで公開されている情報の中から、採用する企業が事前に把握しておいた方がいいと思われる情報を拾い上げて、判断材料として報告するという考え方です。

インタビュアー:
まさにそこが重要ですね。
「犯罪者を見つける」というより、採用後に企業が「それを知っていたら採用判断が変わっていたかもしれない」と思う情報を、事前に見つけるということですよね。

調査員:
そうですね。
最終的にどう評価するかは企業側の判断になります。


ケース1:本人の名前と顔が、成人向け作品への出演情報と結びついていた

インタビュアー:
実際には、どのようなケースがありましたか?

調査員:
過去に、候補者本人と思われる人物が成人向け作品に出演していたことが、公開情報から確認できたケースがありました。
作品に関連する情報と本人の名前や顔が結びついていたため、調査の過程で発見しました。

インタビュアー:
もちろん、それ自体が犯罪という話ではありませんよね。

調査員:
はい。
違法行為があったという意味ではありません。
ただ、採用する会社によっては、職種や企業イメージ、顧客との関係などを踏まえて、採用前に把握しておきたい情報になる可能性があります。
そのため、確認できた事実として報告することがあります。


ケース2:匿名SNSで、性的嗜好について大量に投稿

調査員:
匿名に近いSNSアカウントを調べていて、本人との関連性が確認できたケースもありました。
そのアカウントでは、自身の性的な嗜好についてかなり多くの投稿をしていました。

インタビュアー:
匿名アカウントでも本人だと分かるものなんですか?

調査員:
ケースによりますが、本人の顔が分かる情報だったり、自分の経歴について話していたり、他のアカウントとのつながりだったり、複数の情報を確認していくことで関連性が見えてくることがあります。

インタビュアー:
投稿内容そのものが犯罪というわけではないけれど、「企業として把握しておいた方がいい可能性がある」と。

調査員:
そうですね。
個人の趣味や嗜好そのものを問題視するわけではありませんが、公開SNSでの発信内容やその程度によっては、企業側がリスクとして確認したい場合があります。


ケース3:若年者を名乗るアカウントに、積極的に接触していた

調査員:
印象に残っているのは、若年者を名乗るアカウントに対して、候補者と思われる人物が積極的に接触していたケースです。
相手は実際にはスパムや出会い目的の偽アカウントと思われるものでした。
ただ、重要なのは相手が実際に誰だったのかだけではありません。
その候補者が「若い女性だと思って」コミュニケーションを取っていた形跡が確認できました。

インタビュアー:
これは企業側からすると気になる情報ですね。

調査員:
そうですね。
しかも、その人物には配偶者がいることをうかがわせる情報もありました。
それにもかかわらず、相手に対して会おうとする趣旨のメッセージなどを送っていました。
もちろん、その情報だけで何らかの犯罪性を断定することはできません。
ただ、「こうした行動が確認されました」という事実は、企業側に報告すべき情報だと考えました。


ケース4:本名や出身地を公開した状態で、性的サービスに関する詳細なレビューを投稿

調査員:
別のケースでは、本人の本名や出身地など、個人を特定できるプロフィールと結びついた状態で、性的サービスを提供する店舗について詳細なレビューを投稿しているケースもありました。

インタビュアー:
匿名ではなく、本名に近い状態ですか?

調査員:
そうですね。
内容もかなり踏み込んだものでした。
もちろんサービスを利用したこと自体を問題視するという話ではありません。
ただ、本名などと結びついた状態でそうした情報をインターネット上に公開していることについては、情報管理や社会的なリスクという観点から企業が把握しておいた方がいい可能性があります。


ケース5:少女をモチーフにした性的なイラストを繰り返し投稿

インタビュアー:
今回のテーマに近い事例では、どのようなものがありますか?

調査員:
SNS上で、少女をモチーフにした性的なニュアンスを含むイラストを繰り返し投稿していたケースがありました。
本人が描いたと思われる作品を、自身のアカウントに多数掲載していました。

インタビュアー:
その情報は調査報告に入れたんですか?

調査員:
はい。
懸念情報として報告しました。
ただし、これについても「こういう絵を描いているから、この人は犯罪を起こす」と判断しているわけではありません。
あくまで、公開SNS上にこうした投稿が確認できるという事実を企業に伝えています。
特に子どもと接する可能性がある仕事などであれば、企業側が採用判断をするうえで確認しておきたい情報になる可能性があります。


SNS調査の価値は、「アウトになる前」の情報を拾えること

インタビュアー:
今回話を聞いて改めて感じるのが、SNS調査の価値は「すでに問題を起こした人を見つけること」だけではないということです。

調査員:
そうですね。
過去に明確な問題があれば、別の方法でも確認できる可能性があります。
一方でSNSには、その人が日常的に何を発信しているのか、誰にどのように接触しているのか、どういうコミュニケーションを取っているのかなどが残っている場合があります。
そこは履歴書や面接だけでは分かりにくい部分だと思います。

インタビュアー:
面接で「問題を起こしたことはありますか」と聞いても、当然「ありません」と答えるでしょうしね。
でもSNSを見ると、企業として「これは採用前に知っておきたかった」と思う情報が出てくることがある。

調査員:
はい。
私たちがやっているのは、そこを見つけて企業に伝えることです。


「問題を起こしていないから大丈夫」だけでは、採用リスクを防ぎきれない

採用における安全対策を考えるとき、どうしても目が向きやすいのが「過去に問題を起こしたことがあるか」という点です。
もちろん、それは重要な確認項目の一つです。

しかし今回の取材で見えてきたのは、問題が表面化する以前の段階にも、企業が採用判断の材料にしたい情報が存在するということでした。
若年者だと思っている相手への接触、本人と結びついた匿名アカウントでの投稿、社会的なリスクにつながり得る公開情報――。
一つひとつを切り取れば、それだけで人物の危険性を断定できるものではありません。

だからこそ重要なのは、「SNSを見て人を決めつけること」ではなく、確認できた事実を採用企業へ提示し、採用判断の材料を増やすことです。
特に、教育・保育など子どもと接する機会のある組織では、一度の採用ミスが本人や企業だけではなく、子どもや保護者にも大きな影響を及ぼす可能性があります。

履歴書は整えられる。
面接の受け答えも準備できる。
しかし、過去から積み重なったSNS上の行動まで、完全に作り変えることは容易ではありません。

採用前調査の役割は、「この人物は危険だ」と断定することではありません。
採用してから「知っていれば採用しなかった」と後悔する情報を、採用前にできる限り見つけること。
企業調査センターの調査員が日々SNSを追う理由は、まさにそこにあります。

 

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