「この人物を登用してよいのか」──SNS投稿200件以上が示した中堅層のリスクと企業判断のリアル

 

近年、採用活動の現場で「ネット上の発言」が評価項目に加わるケースが増えています。
特に中途採用や役職登用においては、能力・経歴に加え、“発信の癖”までが注視されるようになりました。
ある企業から寄せられた調査依頼は、まさにこの問題を象徴していました。
依頼元は全国展開する大手食品メーカー。最終面接に進んでいる重役候補者について、「SNS上の過去の投稿を確認してほしい」とのご要望がありました。
40代後半、業界経験も十分。書類・面接上の評価は極めて高く、内定間近の段階でした。
ただ一つ、社内から“過去に過激な投稿をしていたかもしれない”という匿名情報が寄せられたことが引っかかり、バックグラウンド調査が実施されました。

特定されたSNSアカウントと、200件超の投稿履歴

調査により複数のSNSアカウントが特定されました。実名との関連性が確認できるX(旧Twitter)には、数年分の投稿が残されており、非公開設定にはなっていませんでした。投稿内容の傾向は以下の通り。

・Z世代やジェンダー問題に対する極端な批判的発言
「LGBTQに配慮しすぎ」「Z世代は打たれ弱すぎる」など、差別的・断定的な表現が目立つ
・著名人への執拗な中傷
特定の芸能人・インフルエンサー・政治関係者を名指しで攻撃。投稿数は200件を超え、罵倒・人格否定が中心
・生成AIや教育改革に対する陰謀論の拡散
「AIが国民を監視する未来がくる」「教育制度は国家による思想統制」など、根拠の乏しい主張
・政権に対する罵詈雑言、過剰な中傷
「総理は売国奴」「与党は外国と密約している」など、侮辱と陰謀論が混在する投稿が複数

いずれの投稿も、日常的に利用されていた実名アカウントから発信されていました。
一部には、会社名や過去の職歴と照合可能なプロフィールも残されており、拡散時の影響は看過できないレベルでした。

中堅層に潜む“ネットリスク”の盲点

こうしたSNSリスクは、若年層の一部に限られた問題と見なされがちですが、実際には中堅〜管理職世代での発生頻度も高くあります
SNS黎明期を「プライベートの延長」で使ってきた世代は、情報発信の影響力や、記録の残り方への認識が甘いまま、実名や経歴をひもづけたまま投稿しているケースが少なくありません。
今回のように、本人は過去の投稿を忘れていても、検索・抽出は可能です。
外部からの告発や内部告知が引き金となり、“企業の信用問題”に発展するリスクは常に存在しています。

登用見送りの判断と企業の危機管理意識

最終的に、当該候補者の登用は見送られました。
業務スキルへの不安は一切ありませんでしたが、「企業の顔としての適性に疑義あり」と判断されました。
投稿内容そのものが法的に問題となる可能性もありましたが、それ以上に「企業として説明責任が果たせない」ことが大きな懸念材料でした。
数年前までなら黙認されたかもしれない投稿も、今や炎上・報道・企業批判の引き金になり得ます。


中途採用や管理職登用において、リスクは経歴やスキルの裏側に隠れています。
そして企業が失うのは、採用失敗の数百万円ではなく、社会的信頼そのものです。

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