「業務委託だから大丈夫」 その発想が企業の信用を一瞬で失わせる

企業の人材活用は、この数年で大きく変化しています。かつては正社員を中心に組織を作り、必要な業務を社内で完結させる企業が多くを占めていました。
しかし現在は状況が違います。デザイナー、ライター、エンジニア、マーケター、コンサルタント。専門性の高い業務は、外部のプロフェッショナルに委託するケースが急速に増えました。プロジェクト単位で専門人材を起用することで、企業は必要なスキルを短期間で確保できます。結果として、新規事業の立ち上げやコンテンツ制作のスピードは確実に上がりました。
しかし、この便利な仕組みの裏側で、多くの企業が見落としているリスクがあります。それは「業務委託だから企業責任は小さい」という認識です。契約は外部の個人事業主。雇用関係ではない。発注しているだけ。
こうした理由から、外部人材の経歴や過去の活動をほとんど確認しないまま仕事を依頼してしまう企業も少なくありません。
しかし現在の社会では、その判断が企業の信用リスクになるケースが増えています。

業務委託でも「起用責任」は企業にある

業務委託人材を起用する際、多くの企業担当者はどこか安心しています。雇用契約ではないため、採用ほど慎重に調査する必要はない。契約範囲の業務だけお願いしている。このような認識です。
しかし問題が起きたとき、社会が注目するのは契約形態ではありません。「その人物を起用した企業の判断」です。
例えば、企業の広告制作を外部デザイナーに依頼したとします。そのデザイナーが過去に問題行動を起こしていた場合、世間はこう見ます。「なぜ企業はその人物を起用したのか」
つまり、外部人材であっても、その人物の行動は企業の活動の一部として見られるのです。
その結果、問題は個人の過去ではなく企業の管理体制として扱われます。外部人材を起用するということは、その人物の行動が企業ブランドに影響するという意味でもあります。

実際に起きている企業リスク

近年、企業が外部クリエイターを起用した後に問題が発覚するケースがいくつも報道されています。ある大手出版社では、漫画作品の制作に関わっていた外部クリエイターの過去の問題行動が後から明らかになり、大きな批判を受けました。企業側は「別名義で活動していたため把握できなかった」と説明しましたが、世間の反応は厳しいものでした。問題になったのは個人の過去だけではありません。「企業は起用前に確認していたのか」という点でした。
同様の問題はクリエイティブ業界だけではありません。広告制作会社、IT企業、スタートアップなどでも、外部パートナーの過去のトラブルやSNS発言が問題になり、企業のブランドイメージに影響した事例が報告されています。
つまり現在は、外部人材の問題が企業の信用問題として扱われる時代になっています。

「外部だから調べない」企業が一番危ない

業務委託の人材は、企業の内部組織に属していません。そのため
・普段の行動が見えない
・過去の活動履歴が把握しにくい
・問題が起きるまで気づきにくい
という特徴があります。
しかし実際には、多くの企業で次のような状況が見られます。
・経歴を確認していない
・SNSをチェックしていない
・過去の活動歴を調べていない
つまり採用では当たり前に行う確認をしていないという状態です。
そして問題が発覚したとき、企業は必ずこう問われます。「なぜ確認しなかったのか」外部人材が増える時代ほど、この問いは厳しくなっています。企業のブランドや信用は、社員だけでなく外部パートナーの行動にも左右されるからです。

企業が守るべきなのは契約ではなく信用

外部人材の活用は、今後も企業活動の中心になります。クリエイター、原作者、デザイナー、ライターなど、組織外の専門人材に仕事を任せる機会は確実に増えていきます。
しかし、そのとき企業が守るべきものは契約書ではありません。信用です。問題が起きたとき、社会が問うのは契約形態ではなく「なぜその人物を起用したのか」という企業の判断です。その問いに答えられない企業は、信用を守ることができません。
だからこそ必要なのは起用前のバックグラウンド確認です。
SNSの発信内容。過去の活動履歴。トラブル歴。必要に応じた犯歴確認。
これらは採用管理ではなく企業の信用管理です。
そして企業の信用は誰に仕事を任せるかという最初の判断で決まります。