- 「もう限界です。解雇できませんか」営業部長がそう口にしたのは、退職者が2名続いた直後でした。問題となっていたのは入社3年目の社員です。遅刻が月5回以上。指示に対する返信は翌日以降。クライアントへの報告漏れが2件発生し、担当変更も検討されていました。会議では反論が多く、決まった段取りを守らず、同僚の工数が増えました。新人はこの社員を避けるようになり、現場の質問が管理職に集中しました。
- しかし、人事が確認すると、正式な注意記録は一切ありませんでした。部長は「何度も言っている」と言いますが、証拠は残っていない。就業規則には「著しく勤務態度が悪い場合は懲戒対象」とあるものの、「著しく」の基準は明文化されていませんでした。この状態で解雇を行えば、争われる可能性が高くなります。
- 日本の労務実務では、解雇には合理的な理由と社会通念上の相当性が求められます。「みんな困っている」「雰囲気が悪い」は理由になりません。必要なのは、日時・行為・業務への影響・指導履歴です。記録がない会社は、第三者に説明できません。
- 例えば、この会社で揃えるべき記録は次のようなものです。
- ・◯月◯日 9:42出社(始業9:00)
- ・◯月◯日 指示メール未返信(当日中対応指示)
- ・◯月◯日 クレーム発生、対応遅延で再訪問が発生
- ・◯月◯日 面談実施、改善期限を◯月末と設定、本人発言を記録
- さらに、改善機会を与えた事実が重要です。期限を設定し、達成基準を行動と数字で示し、それでも改善がなかった場合に、段階的処分の検討が可能になります。ここを飛ばすと、会社側の負担が増えます。言い方が強いだけでパワハラを主張され、解雇の話が止まるケースも起きます。
- この会社は最終的に、就業規則の整備、面談記録の徹底、行動目標の数値化、段階的懲戒、配置転換による被害抑制を実施し、半年後に退職勧奨を提示しました。本人は合意退職に応じました。
- ここで、経営陣が一番驚いたのは損失の出方です。退職者2名の補充で求人広告と紹介料が発生し、面接対応で管理職の稼働が削られました。引き継ぎが回らず、取引先への謝罪が3回増えました。社内では「注意されないなら守らなくていい」という空気が出て、遅刻が増えました。問題社員1人に引っ張られ、現場全体の手間と支出が増えていきます。
- そして現実には、こうした社員の兆候は入社前に出ています。退職理由が毎回「人間関係」。面接で前職トラブルの説明が長いのに、日時・相手・自分の返答が出ない。注意された話が相手批判だけで終わる。リファレンスの同意を渋る。職歴の空白期間を質問すると話題を変える。入社後に初めて問題が出たのではなく、採用時点で材料が揃っていたのに見逃した、というパターンが多いです。
- だから必要なのは、後処理より入口管理です。採用前に、学歴・職歴の確認、在籍期間の事実確認、退職理由の整合、複数情報の突合を行い、面接の印象ではなく事実で判断する。これを入れるだけで、問題社員の流入確率は下げられます。解雇は感情のボタンではありません。準備の積み上げで初めて選択肢になります。会社が詰む前に、採用の入口から守る体制を作れているか。ここが差になります。
採用調査のプロが教える!
モンスター社員の取扱説明書 特別無料ダウンロード
以下のお問い合わせフォームからお問い合わせいただくと、すぐにご覧いただけるPDFをお送りします。
