リファレンスチェックの違法性とは?違法になる4つのケースと適切な実施方法を解説!

中途採用の際、候補者の実績や在籍期間、人物像などは、書類や面接だけでは十分に把握できないことがあります。こうした情報を、求職者の前職や現職で一緒に働いている第三者から取得することを「リファレンスチェック」と呼びます。   リファレンスチェックは求職者に関する調査を行うため、やり方次第では個人情報保護法などの法律に抵触する可能性があります。   今回の記事ではそんなリファレンスチェックが違法になってしまうケースや、適切な実施方法について詳しく解説いたします。

リファレンスチェックは違法か?

リファレンスチェック自体は違法ではない

リファレンスチェックは、候補者に関する情報を収集する手法なので法律違反にならないか心配な方もいらっしゃるかと思います。結論を申し上げますと、リファレンスチェック自体を禁止する法律はありません。   しかし、次の章で詳しく解説しますが、やり方次第では個人情報保護法などに違反してしまう可能性もあります。   そのため、リファレンスチェックを実施する際には、適切な方法で個人情報を取り扱い、実施前には弁護士に相談しておくことをおすすめします。

ただし、個人情報の取り扱いには要注意

リファレンスチェック自体は法律で禁止されていませんが、候補者に関する情報は個人情報保護法における「個人データ」に該当しますので、本人の同意なしにリファレンスチェックを行った場合は違法となります。   質問を受ける側の企業も、本人の同意が確認できない場合はリファレンスチェックに応じないよう徹底されている場合も多いです。

リファレンスチェックが違法になるケース

本人の同意なく個人データを第三者に提供する

リファレンスチェックでは、個人情報を取り扱うことになりますので、個人情報保護法に抵触していないかが重要なポイントです。とくに個人情報保護法・第23条では以下のように記されています。
(第三者提供の制限)
第二十三条 個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない。  引用元:個人情報保護法23条
  この規制はリファレンスチェックを実施する側の企業ではなく、質問を受ける側が守らなければいけないものですが、リファレンスチェックの際には必ず本人の同意を取らなければいけません。

内定を取り消す

中途採用において、内定後のリファレンスチェックには注意が必要です。リファレンスの内容が芳しくないとしても、安易な内定の取り消しは違法になる可能性があるからです。   判例上では、候補者に内定を出した時点で、始期及び解約権を留保されたものではあるものの、雇用契約は成立していると解されています。法律上、内定取り消しは解雇と同様に扱われるのです。   労働契約法16条の「解雇権濫用法理」により、適当でない理由に基づく解雇は無効とされます。学歴詐称や経歴詐称、重大な懲戒処分を受けていたなどの余程の理由がない限り内定を取り消すことはできません。リファレンスチェックの結果を理由に内定を取り消すのは、必ずしも法律上認められるわけではないことに注意が必要です。

候補者の同意なくリファレンスチェックを実施する

求職者の同意を得ずにリファレンスチェックを行うことは違法です。例えば、知人を通じて情報を取得したり、SNSを介してリファレンスを取得することは、個人情報保護法違反の可能性があります。   個人の情報は本人の同意を得ない限り提供・取得できません。本人の同意なくリファレンスチェックを行うことがないようにしましょう。

禁止されている事項を調査する

リファレンスチェックでも、面接で聞いてはいけないことは聞くことができません。特に候補者の不利益や差別に繋がる可能性のある質問には注意が必要です。   厚生労働省の指針では、人種・思想・信条など個人情報の収集は本人同意または直接提供がない限り原則認められないとされています。特に、本人が努力しても解決できない人種や家族の情報や、労働組合への加入状況など、差別やプライバシー侵害につながる情報を調査することはタブーです。

違法にならないリファレンスチェックの実施方法

個人データを適切に取り扱う社内体制を整える

リファレンスチェックの結果得られた個人データは、個人情報保護法に基づいて適切に取り扱う必要があります。   基本的に、個人情報取扱事業者として、以下の規定を守ることが求められます。 ・不要な個人データの削除(個人情報保護法19条) ・安全管理措置(同法20条) ・個人データを取り扱う従業員への監督(同法21条) ・外部委託先の監督(同法22条)   適切なリファレンスチェックを実現するためには、人事・情報管理部門の連携による社内体制整備が重要です。データの取り扱い方針や監督体制を整え、個人データを適切に取扱いましょう。

候補者にリファレンスチェックの同意を得る

リファレンスチェックを適切に行うには、候補者に対して目的と方法をわかりやすく説明し同意を得ることが必須です。また、候補者の同意を得たことを示すものを保管しておくことも大切です。   また、企業が調査会社に委託する場合も、候補者の同意が必要です。さらに、推薦者の個人情報も同意なしで教えてもらうことはNGです。推薦者にもリファレンスチェックの目的や方法について丁寧に説明し、推薦者が疑問や不信感を抱かないようにする必要があります。

内定前にリファレンスチェックを実施する

リファレンスチェックの結果によって、内定取り消しを行うのは非常に難しいです。「解雇権濫用法理」によって解雇に関する非常に厳しいルールがあるためです。   そのため、リファレンスチェックを実施するまでは正式な内定を出すことを留保しておくことをおすすめします。内定前にリファレンスチェックを行い、懸念点がないことを確認したうえで正式な内定を出すと良いでしょう。

リファレンスチェックを拒否された場合の対処法

本人の同意がないリファレンスチェックは違法となりますので、拒否された場合は別の方法でアプローチしていく必要があります。この章ではリファレンスチェックを拒否された場合の対処法を3つご紹介します。

拒否した理由を聞く

まずは、リファレンスチェックを拒否した理由を聞いてみましょう。   リファレンスチェックが拒否される理由のなかで多いのが、転職活動を今の職場に隠したいというケースです。その場合は、今の上司や同僚以外の第三者を推薦者とすることで同意を得られるかもしれません。   拒否した理由を理解し、柔軟に対応することが大切です。リスク管理の観点からリファレンスチェックを必須としている企業も少なくありませんが、候補者の事情も把握したうえで採用するかどうかを検討しなければいけません。

提出書類から経歴を確認する

リファレンスチェックを拒否されても、他の方法で候補者を見極めることも可能です。例えば、候補者に退職証明書、雇用保険被保険者証、卒業証明書、源泉徴収票、年金手帳などの提出を求めるのもおすすめです。   これらの提出書類を確認することで、リファレンスチェックの一つの目的である経歴詐称の判断に役立てることが可能です。

面接・適性検査でマッチ度を測る

さらに、面接を工夫したり適性検査を実施したりすることで、候補者と企業のマッチ度を確認することも可能です。候補者が採用企業の企業風土や行動規範などに合うかどうかをチェックしましょう。   例えば、お互いにフラットに話すことができるカジュアル面談を取り入れてみるのもおすすめです。候補者の本音を聞くことができるのでミスマッチを事前に防ぐことができます。

まとめ

今回の記事では、リファレンスチェックのやり方について、違法となるケースなども含めて詳しくご紹介しました。   リファレンスチェックは、個人情報保護法に抵触しない範囲であれば、合法で候補者を見極めることのできる有効な手段です。ただし、候補者の同意なく情報を集めたり、適切でない内定取り消しはトラブルに発展しやすいです。   違法行為にならないように気を付けながら行う情報収集は難しく、労力もかかることでしょう。負担とリスクを軽減するためにリファレンスチェックサービスを活用することもおすすめです。   企業調査センターでは、企業様に代行してリファレンスチェックを行っております。多くの実績や経験を活かし、応募者の本音を引き出すリファレンスチェックが可能です。また、リファレンスチェック後には調査レポートを作成し、どんなに些細な情報でも言語化して分かりやすくお伝えしています。   リファレンスチェックでお悩みの企業様がいらっしゃいましたら、ぜひお気軽にご相談ください。